丸友中部青果は2015年6月17日、松本市和田に配送センターを兼ねた新社屋を竣工し、7月8日よりほぼ全ての業務を市場より移しました。
この新社屋について、代表取締役松倉勇記が説明します。

Q.新社屋を竣工した背景は何ですか?
 ここ何年間か食品に関する事故について、紙面を賑わす機会が増えて来ていました。異物の混入や食の安全を問われる事柄が危惧される中、あるお取引先様より「これからの青果は安心・安全な物流が出来なければダメだ。温度管理が出来て、部外者からのリスクも管理することが必要とされる。おたくはそれができるのか?」という話を頂くことがありました。
まず最初に手を付けたのは、市場内で配送する部署をパネルで囲って、徹底した温度管理を始めたことです。これで16℃くらいに安定して保管できるようになりました。それでもまだ荷物の上げ下ろしの際には外気にさらされざるを得ない部分もあって、完全な温度コントロールまではできませんでした。
実際お客様に納品する際に、場所によっては温度管理がとても厳しく、荷物が着くとまず赤外線で温度検査をすることがあります。それが温度範疇にないと返品になります。それほど今は厳しくなっていますから、やはり今ある環境を理由にできないという想いが強くありました。
食品流通の現場が安心・安全に厳しくなってきている。それに我々はどう対応していくのか、それを環境のせいにするのではなくて、自らそれに合う事をやっていかなければならないという意識が社内でも強くなってきた。ただこういう「ピンチ」を逆に「チャンス」にもすることができる。ある意味差別化にもなりますから、こういった時に独自性を出していかないといけない。我々はまず食品の安心・安全を第一に、流通に関わっているという意識を持ちながらやっていこうと決めました。そのためにここまでの施設が必要だという決断に至りました。

Q.新社屋はどのような施設ですか?
この臨空工業団地にタイミングよくご縁があり、およそ1,200坪の土地を取得することができました。鉄骨平屋一部二階建ての社屋は、一階約600坪が全て配送に関わる部屋となっています。以前の市場内にあった時の3倍の広さを確保できました。また積み下ろしについてもトラックバースになっているので、低温のトラックからそのまま配送センター内に温度を保ったまま効率よく荷物を出し入れすることができます。
 配送センターの中は区分けで若干は違いますが概ね11℃になってます。それ以上下げると低温障害が起きてしまうので、この温度を保っています。食品の異物混入の7割は「髪の毛」と言われていますが、仕分け作業をする際には必ず使い捨てのキャップを被って行っています。それと建物への出入りにも全てセキュリティーチェックを導入しています。これは外からは見えない事ですが、食品の安心・安全というものにどう協力できるかということで導入しました。
また、施設内の「カット室」「パッケージ室」などには「光触媒チタン抗菌コート」を採用しました。抗菌効果だけでなく、野菜などを腐らせるエチレンガスの発生を抑制するもので、市内のアシスト&ソリューションさんの特許技術です。これもより安全性が求められる状況で、付加価値の高い野菜の品質を保持して届けたいという想いからです。

Q.このような施設は県内では初めて?
 仲卸業者が低温管理された配送センターを自社で持つのは県内で初めてだと思います。産地から受け取った荷物を小分けにして小売さんや病院給食関係、スーパーさんに届けるというのが我々の仕事です。ですからそれを行う場について、時代の要請から一歩進んで自ら取り組んだ形がこの施設です。
Q.新社屋に移ってからの効果は?
 安全・安心を保ちながら、配送のトラックへ載せる効率などが向上して、各スーパーさんへの到着が今までより平均で約45分も早くすることが出来ました。その点で非常に評価を頂いています。
Q.今後については?
 今回の移転でいわゆる「フードディフェンス」の面では圧倒的に進化することができました。また配送センターを設置したことによって、自ら「安心・安全」を担保した物流を持つことにもなりました。物を並べて売る時代から、自分たちが自前で「安心・安全」に商品を届けられるという、大きな質的転換を進めたことで、今以上に積極的にお客様のふところに入っていきたいと思っています。